第八巻 たった一言で【1〜9部】



第八巻 たった一言で「大丈夫、たのんでください」発刊のご挨拶
 
 「あなたの心に響いた『たった一言』を教えてください」そして、「それにまつわるエピソードを教えてください」
 そんな呼びかけによる「たった一言で」コンテストも、今年で8回目。おかげさまで、3,385編ものご応募をいただきました。そして、入選作品240編の中から、さらに50編を選び、本書を出版することができました。たった一言で元気付けられ、たった一言で明日への力が出てくる。回を重ねるごとに、言葉の「重み」を感じさせられます。
 例えば、「大丈夫か?」という言葉。ある人が、大怪我をして病院に担ぎ込まれました。手術をして麻酔が覚めると、猛烈な痛みが襲ってきました。そんな中、お医者さんに、「今回は、応急手術です。落ち着いたら、もう一度手術が必要です。もしかすると、歩けなくなるかもしれません」と言われました。もう失意のどん底です。そこへ、友人がお見舞いにやってきて、心配そうに言います。
「大丈夫か?」思わず怒鳴ってしまった。
「大丈夫なわけないだろ!」
 ある職場での話です。いつも元気で周りに冗談を言ったりする女性が、朝からずっとパソコンに向かいっ放し。様子を伺っていた課長が、一言声を掛けました。
「大丈夫か?」
すると、大声で泣き出してしまいました。少し落ち着いてから聞いてみると、離れて暮らす母親が病気で入院しており、余命いくばくもないとのこと。辛いけれど、誰にも悟られないように毎日明るく振舞っていた。でも、辛くて辛くて…。そこへ掛けられた課長の一言が嬉しくて、心のダムが決壊して泣き出してしまったのだと言います。同じ「大丈夫?」でも、受け取る側の心境、状況によってこれほど異なります。言葉って、簡単だけど怖いものです。でも、「だから」声を掛けないほうがいいということにはなりません。その都度、どんな言葉を掛けたら相手の心に届くのか。元気付けられるのか。考えに考えて声を掛ける。それは、数多くの声掛けを経験した人にだけわかるものでしょう。
 今回も、珠玉の「たった一言」が集まりました。この一冊が心のビタミンになることを祈っています。


【プチ紳士・プチ淑女を探せ!】運動 代表 志賀内 泰弘



掲載作品こころぽかぽか賞

「受け入れてありのままに生きる」… 亀川さん

 中学一年のときに、家の中で友だちとふざけていて、勢いよく転んだ拍子に顔面を火鉢で強打し、それがもとで右目の網膜がはがれ、手術で十ヶ月ほど学校を休むことになりました。なぜ自分がこんな目にあうのだろうと、落ち込みました。そして看病をしてくれる母にそんな愚痴ばかりをこぼしていると、ある日、言われました。
「人は生きている間にいろんなことがあり、大怪我をして足や腕をなくす人もいたりすけど、悔やんでばかりいても前に進めないよ」と。
起こってしまったことをどんなに悔やんでも時間を元には戻せない。
「ありのままを受け入れて生きて行くしかない」と。
母のこの言葉で私は前を向いて歩いていく気持ちになりました。今でもありがたく思っています。




掲載作品スマイル賞

「大丈夫?」… ペンネーム:ぴかちゅー

 声を掛けられるとは思っていなかった。
 新生活を始めたばかりの春の頃、こっそり帰りの電車の中で泣いて帰ることがあった。目標に向かって見え始めた新しい道に心おどる反面、慣れない新しい生活に不安も強くて。だけど自分で決めた道だから、誰にも弱音は吐けないと思っていた。電車の中はみんな知らない他人だから、誰も私なんて気に留めないから…そう思っていた。
「大丈夫?」
 ある日、駅の階段で声を掛けてくれたのは、駅の清掃のお姉さんだった。私の泣きはらした目と、もともとまひのある足を引きずった歩き方がよほど頼りなげに見えたのかもしれない。私はハッとした。
(見ててくれる人、いたよ! ああ、この人の前では、どうせなら笑顔でいたいなぁ、もう、泣きたくないなぁ)
 その日から、私は泣くのをやめた。代わりに、毎日駅であの清掃のお姉さんとすれ違うたびに笑顔で、
「おはようございます」
「熱いね。今日あそこ空いてるよ」
なんて挨拶するようになった。そのやりとりは、自然と私の気持ちを明るくしてくれたし、今もその日一日あたたかなやる気をくれる。
 こんな出会いがあるんだなと思う。お姉さんのひとことが気づかせてくれたおかげで、今はもう、私はすっかり明るい気分で職場に通うようになった。





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770円(内税)
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