第三巻「たった一言で」【1〜9部】



掲載作品こころぽかぽか賞

「ほっこりしてきやはったなぁ」…群馬県 氏名:頼富さん

大学時代は4年間京都で過ごした。お世話になった下宿は江戸時代から続く古い民家で、80近いおばあちゃんが一人で家を守っていた。私自身は苦学生で夜遅くまで運送会社で働いて何とか学費を稼いでいた。

下宿には風呂もなく、帰宅も遅いので、自然に朝銭湯に行くのが日課になった。朝6時風呂桶を持って下宿を出る。大学と仕事の疲れも熱い湯にゆっくりつかっていると、きれいに飛んでいった。そして、さっぱりとした心で下宿まで帰ってくると、おばあちゃんが決まって玄関の水打ちをしつつ、

「ほっこりしてきやはったなあ」

とはんなりとした京都弁で声をかけてくれた。その優しい響きがいつも心を軽くしてくれた。

今にして思えば、経済的に苦労しながらも大学を卒業できたのは、あの時のおばあちゃんの優しい一言があったからだと思っている。




掲載作品いい言葉で賞

「この子が大きくなる頃の日本がよくなってますように。」…岡山県 氏名:リンズさん

赤ちゃんを連れて外出するといろんな人に声をかけられる。知らない人から声をかけられることなどそれまであまりなかったので「赤ちゃん可愛いわね。」と言われると素直に嬉しくて顔がほころんでしまう。声をかけてくれる方は大体が年配の女性だ。そんな中印象に残った言葉が年配の男性からの一言。

「この子が大きくなる頃の日本がよくなってますように。」

すれ違うほんの一瞬でこんな言葉をかけてくれたことに驚き、自分がこのような言葉を見知らぬ母親に言えるだろうかと考えてしまった。

社交辞令だとしてもなかなか言える言葉じゃない。子ども達の未来を心から案じてくれているのだと思いじんときた。

震災の年に生まれた我が子。この子が大人になる頃の日本がどうなっているかまだ想像がつかないけど明るい未来であることを願わずにはいられない。
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770円(内税)
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